最大判昭和35年10月19日
それじゃ、配役からね。
今回の登場人物は、みんな新潟県のある村(岩船郡山北村)村議会議員さんってことでお願いね。

そして、村役場位置条例について

賛成派の議員らを、チイちゃんナカちゃん
反対派の議員らを、サルつかさちゃん
ナレーターは、が務めるわね。

ナレーター
昭和32年。
新潟県のある村議会では、条例の一部改正について審議していました。

反対派議員
あたしは反対だよ!

反対派議員
あ、それなら私も反対します!
ナカちゃん、困ったね・・・。
あの2人が賛同してくれないと、条例の改正に必要な3分の2の特別多数(地方自治法4条3項の特別決議事項が獲得できないよぉ。

賛成派議員
このままだと否決されてしまうです!
賛成派議員

反対派議員
あらあら。
なになに? なんか悪巧みでもしてるの?
言っておくけど、このまま審議を続けても、あたしは賛成派には廻らないからね!

反対派議員
私もです!
あうあうあうあうです!
このままだと、改正案は否決されてしまうです!

賛成派議員
ナカちゃん、チイは、とんでもない事実に今、気づいちゃったよ!
賛成派議員
な、な、なんです!? です!
賛成派議員
オネーちゃん! つかさおねーちゃんっ!
2人は、以前、村の合併促進委員を務めていたよね!
そして、その遂行のために働きかけていたよね!
それなのに、今になって、位置条例の一部改正に反対するなんて、ソレは議会を混乱に落とし入れていることだと、チイは思うよ!
そんなことをする村議員は、懲罰ものだと思うよ!

賛成派議員
た、た、確かにです!
賛成派議員
チイは、オネーちゃんと、つかさおねーちゃんの懲罰動議を提出するよ!
みんなも、賛成してくれるよね?

賛成派議員

反対派議員
うわっ!!
なになに、旗色悪くない?
動議は可決されたです!
流石、チイちゃんです!

賛成派議員
えへへへへ。
懲罰動議が可決されたから、これで反対していたオネーちゃんと、つかさおねーちゃんは、出席停止処分になるね。

賛成派議員

反対派議員
・・・くぅぅぅぅ。
ナニを好き勝手なことしてくれとるんだお!
チイちゃん!
2人が出席停止の間に、改正条例案を採決するです!

賛成派議員
そうだね。
賛成派議員
2人の反対派がいないから、特別多数で可決されたです!
賛成派議員

反対派議員
・・・あのチビッ子共め!!
マヂ許せん!

反対派議員
藤さん、大丈夫です。
ココは私に任せて下さい!
あの動議には問題があります!
村議会会議規則を確認して下さい。
懲罰事由は、動議提出の当日の事犯でなければならないとあります。
ですから、あんな昔のことを理由に懲罰動議というのは、規則違反にあたります!

反対派議員
そうだ、そうだ!
よし、それなら、懲罰決議の無効の確認を求めて訴えるお!
まぁ、予備的に懲罰決議の取消しも求めておくね。
 






はい、そこまでね。

事案再現が、少し長めだったから、争点を簡単にまとめちゃうわね。
今日の勉強会との関係で言うと、本件の争点は、
地方議会の懲罰議決に、裁判所の審判権は及ぶのか
ってことになるわ。

うーん・・・。
はなはだ不本意ではあるものの、正直、及ばない気がするかなぁ。
それじゃ、早速判決文を見ちゃいましょうか。

思うに、司法裁判権が、憲法又は他の法律によつてその権限に属するものとされているものの外、一切の法律上の争訟に及ぶことは、裁判所法3条の明定するところであるが、ここに一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争という意味ではない。

 一口に法律上の係争といつても、その範囲は広汎であり、その中には事柄の特質上司法裁判権の対象の外におくを相当とするものがあるのである。
 けだし、自律的な法規範をもつ社会ないしは団体に在つては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがあるからである。
 本件における出席停止の如き懲罰はまさにそれに該当するものと解するを相当とする


 (
(もっと)も昭和35年3月9日大法廷判決――は議員の除名処分を司法裁判の権限内の事項としているが、右は議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止らないからであつて、本件における議員の出席停止の如く議員の権利行使の一時的制限に過ぎないものとは自ら趣を異にしているのである。 従つて、前者を司法裁判権に服させても、後者については別途に考慮し、これを司法裁判権の対象から除き、当該自治団体の自治的措置に委ねるを適当とするのである。)

 されば、前示懲罰の無効又は取消を求める本訴は不適法というの外なく、原判決は結局正当である。
 なお、所論は違憲を云々するが、その論述するところは、ひつきよう叙上と異る見解に立脚して原判決を非難するものであつて、採るを得ない。
うん・・・なんとなく、そうなるだろうって気はしてた。
これが、部分社会の法理ってヤツか・・・。
この判断枠組みは、まだ部分社会の法理の判断枠組みとは言えないわ。
ただ『後の「部分社会論」の完成に決定的な影響を与えた判決と位置づけることができるものという評価はなされているわ。
『判例プラクティス憲法 増補版』信山社 2014年

本判決では
議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止らないから
司法の審判権が及ぶ

議員の出席停止の如く議員の権利行使の一時的制限に過ぎないもの』については『当該自治団体の自治的措置に委ねるを適当とするのである』ことから、司法の審判権は及ばない、としているけれど、
事柄の特質上司法裁判権の対象の外におくを相当とするもの
が、どのようなものをいうのか、という区分についてまでは言及されていないわ。

その点について踏み込んだ判例が、次に見る富山大学事件なのね。
・・・最初っからソッチ見たら、よかったんじゃねぇの?
とマヂレス。
この事件も、百選掲載判例だからね。
この判例の流れも抑えておくべきってことなんじゃないのかしら。
そんなことはいいから!
さ、急いで、次の判例検討にいくわよ!
わーい、わーいっ!!

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