構成要件要素 D因果関係 不作為犯 | ||
今日は、不真正不作為犯を扱った判例を検討するわね。 前回までに勉強した不真正不作為犯を、判例はどのような判断枠組みによって認めているかを、勉強しましょ。 |
||
くわばら、くわばら。 | ||
こくこく(相槌) |
||
まだ一つも判例検討していないのに、なんでそんなにネガティブな発言してんのよ! 最初の検討判例は、不真正不作為犯の勉強にあたって、質問で事例として出した事案ね。 刑法判例百選掲載の判例でもあるから、コレは外せない事案よね。 早速見ることにしましょ。 最高裁平成元年12月15日決定 ね。 (最高裁平成元年12月15日決定 百選T 4事件) |
||
・・・・・。 | ||
ナカたん、かえってこないね。 まぁ、心配ないし、暫く、このままにしておこっか。 |
||
大丈夫なんだよね? ホントに、10分くらい待てば元気になるんだよね? それじゃ、不作為犯においての一番重要な判例は、判例再現して、しっかりやりたいところだから、ソレはナカちゃんが目を覚ましてからにしようね。 待ってる間に、不作為による放火罪を認めた判例を説明しちゃおっかな。 この事案の判例は、大審院判例に有名なのが2つあるのよね。 1つ目は、自宅で養父と喧嘩して、その養父を殺害した犯人が、養父が喧嘩の最中に投げた火鉢棒の火が、庭の藁に燃え移っているのを認識しながら、死体等の証拠の隠滅に好都合だな、って思って消火せずに、自宅などを焼損させた事案。 (大判大正7年12月18日) 2つ目は、自分の家の神棚のロウソクが傾いているのに気付いておきながら、もし火事になったらなったで保険金がもらえるな、って考えて外出した結果、火事になったという事案なのね。 (大判昭和13年3月11日) このいずれに対しても、大審院は、不作為による放火罪(不真正不作為犯)を成立させているのね。 その際の、成立要件として、@作為義務(自宅の焼損という結果を回避すべき法的作為義務)、A結果回避容易性、そしてB積極的利用意思を挙げているのよ。 @作為義務については問題ないと考えられるわよね。 自宅である以上、法的に消化義務があるといえるし(法令)、その自宅に居たのが犯人しかいなかったという事実が、どちらも共通しているため支配領域にあったといえるわ(排他的支配)。さらに喧嘩や、神棚の不安定なロウソクの立て方等から先行行為もあったと認められるわよね(先行行為)。 多元説から検討しても、作為義務の発生根拠は、認められるわよね。 A作為可能性についても、消火が容易な事案といえることから、この点についても認められるわね。 ただ、大審院は、さらにもう1つ。 B積極的利用意思を成立要件としているところが違うのよね。 この点を踏まえた上で、刑法判例百選掲載の判例の、最高裁昭和33年9月9日判決を見てくれる? (最高裁昭和33年9月9日判決 百選T 5事件) |
||
光ちゃん、ナカたん気絶してんだよ! 気づくまで待とうよ! ね? ね? |
||
大審院で用いられていた成立要件のB積極的利用意思については、今は不要とするのが一般的だから、別にいいでしょ? そのことを確認する意味で、判例を見ようって言ってるだけだから、特にナカちゃんが起きるのを待つことないわよ。 |
||
いやいやいや。 ナカたん勉強好きだから、気絶してる間に勉強進められていると分かったら悲しむと思うなぁ。 あたしには、そんなヒドいこと出来ないなぁ。 |
||
気絶したナカちゃんを、ロボとか、あまつさえポンコツ呼ばわりした人が、どの口でそんなこと言うのかしら。 | ||
むぐぐぐぐ。 | ||
おはようです! | ||
あ、ナカちゃん気付いた? | ||
また気絶しちゃってたみたいです! ちょっと前後の記憶がないので覚えてないです! 御迷惑お掛けしたみたいです! すみませんです! |
||
いやぁ、よかった、よかった。 ホント心配したよぉ。 気絶するなんて、ホントただ事じゃないからね。 ココは、しっかり静養した方がいいよね? うん、うん。 絶対そうするべきだよね! |
||
大丈夫です! むしろ、すこぶる体調がいいです! ささ、早く勉強するです! |
||
無理してるんだね? ワカル、ワカル。 ナカたんが健気に振る舞っているのが痛いほど伝わってくるよ。 |
||
嘘つきなさいよ! あんた、ナカちゃんの気絶なんか、いつも気にも留めてないじゃないのよ! ナカちゃんの気絶を自分の勉強の逃げ口上に利用するのはやめなさいよ! あ、ナカちゃん、丁度刑法判例百選掲載の判例の、最高裁昭和33年9月9日判決の話をするところだったの見てくれる? (最高裁昭和33年9月9日判決 百選T 5事件) |
||
こくこくです! (相槌) (※気持ち倍速気味) |
||
・・・ちょっとちょっと「こくこく」って相槌の擬音でしょ? なんで、擬音にまで語尾がついてんのよ? |
||
最高裁昭和33年9月9日判決 (最高裁昭和33年9月9日判決 百選T 5事件) の事案は、ザックリ説明しちゃうと・・・ 会社の残業職員が、自分の不注意で木の机が燃えているのを発見したのに、自分の失策の発覚を恐れて、消火することなく立ち去った、という事案ね。 この職員の行為に対して最高裁は、残業職員の不適切な火気の取り扱いという重大な過失によって失火となったことを先行行為として評価し、発火した部屋に、当該残業職員しか居なかったという事実から、発火場所についての支配性を認めているわ(排他的支配)。 この2つを根拠として作為義務を肯定しているわね。この点についても多元説による理解が妥当すると言えるわよね。 そして、作為可能性については、当該残業職員以外にも職員が複数名いたから、彼らの協力を仰げば、発火の状況等から消化も容易であったとして、これも認めているわね。 それにもかかわらず、残業職員が自己の失策の発覚を恐れて、消火せずに立ち去って、建物を焼損させた不作為に対して、放火罪の成立を認めているのよね。 この最高裁判決においては、上の2つの大審院判例が用いていたB積極的利用意思を、作為義務の成立要件とはしていないのが大きな違いよね。 積極的利用意思までもを成立要件とすると、被告人にとっては作為義務を認めるハードルが上がることとなるわよね。まぁ、今は不要とするのが一般的って理解がなされているから、あまり深入りせずに終わっておくわね。 |
||
わかったです! わかったです! |
||
なんかテンション高くね? | ||
次の判例検討するです! 不作為犯についての理解を深めたいです! |
||
それじゃ、今日のメイン判例いっちゃう? やっちゃう、やっちゃう? |
||
わーい、わーい! パチパチパチっ! (拍手) |
||
・・・なに、このノリ。 | ||
あんたも一緒にノりなさいよ! なんで傍観者なのよ! それじゃ、お待ちかねの本日のメイン判例! シャクティパット事件 の検討をしましょ! (最決平成17年7月4日 百選T 6事件) |
||
いやぁ、今日も一杯判例検討できたね。 お疲れ、お疲れっ! |
||
わーいわーいです! | ||
今日は、みんな頑張ってたよね。 労いってわけじゃないけど、よかったら一緒に、『ネージュ・ブロンシュ』(洋菓子店の名前)行かない? |
||
光ちゃんがオゴッてくれるの? | ||
うん! | ||
行くっ! 行くっ!! |
||
ナカちゃんもおいでよ。 この後予定ないよね? |
||
行くです! 行くで・・・ |
||
行ってもいいんですか? | ||
うんうん。 おいで、おいで。 |
||
それでは、お邪魔します。 | ||
ん? ロボの電圧が落ちたみたいだお? |
||
ロボって言うのは、私のことですか? どうして、そんな変なアダ名で呼ぶんですか? |
||
そうよ! ナカちゃんに謝りなさいよ! |
||
ごめんなさいです! ごめんなさいです! ロボ、ごめんなさいです! |
||
やめて下さい! そんな変なアダ名で呼ばないでください! |
||
あ、そだ。 ロボには、データのバックアップ機能がないって聞いたんで、あたし、データ保存しといたお! |
||
データ? 保存? |
||
コレ、ナカたんが気絶する前と、気絶しとる間の、今日の勉強会のノートだお。 | ||
藤先輩・・・ | ||
どうせ、あたし復習しないし、ソレ持ってっていいよ。 | ||
ストップ、ストッォップ! ナニ、聞き捨てならないこと言ってくれちゃってんのよ! そのノートは、お店行く前にコンビニでコピーすればいいでしょ! |
||
はい。 藤先輩、ありがとうございます。 ノート、コピーさせて頂きますね! |
||
困ったときはお互い様だよね。 あたしも困ったときはナカたんに助けて欲しいし、それならナカたんの困ったときには、あたしが助けになりたいよね。 |
||
藤先輩・・・ | ||
ところで、あたし、今、友達に「ナカたんロボ」って格好いいあだ名をつけたいなぁ、って思ってるんだけど、その友達が「うん」って言ってくれなくて困ってるんだお。 タスケテくれない? |
||
ソレはイヤです! | ||
ウキっ! (他人がイヤがることをする! ソレがあたしのジャスティス!) |