最決平成元年3月14日 〜自動車荷台事件〜 |
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それじゃ、配役からね。 つかさちゃんいるから、せっかくだから参加してもらうわね。 私がナレーター。 軽四輪の運転手(被告人)が、つかさちゃん。 サルと、ナカちゃんが、車の荷台に乗っていた2人ね。 |
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ナレーター |
被告人となる男は、業務として普通貨物自動車(軽四輪)で出かけるところでした。 | |||
それじゃ、車を出しましょうかね。 | 車の運転手(被告人) |
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おい! 車を出すらしいぞ? まぁ、急いでるみたいだし、いちいち断るのも面倒だから、荷台に乗っちゃおうぜ! |
荷台に乗った人 |
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はいです! 荷台に乗るです! |
荷台に乗った人 |
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ナレーター |
男の運転する車の後部荷台に、男の知らない間に、2人の同乗者が乗り込みました。 ちなみに助手席には、別の1名が同乗していました。 男は、後部荷台の2人の同乗者の存在については知らないままに、車を発進させました。 |
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最高速度30q制限なんて、そんなチンタラしたことしてられないです! 65qくらいは出しても構わないんですよ! |
車の運転手(被告人) |
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うわっ!! 対向車がっ!!! (ハンドル急転把) |
車の運転手(被告人) |
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・・・って、ガードレールにブツかるっ!! (ハンドル急転把) |
車の運転手(被告人) |
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うわっ!! 制御不能ぉっ!! あぁぁっ!! 信号にブツかるっ!! |
車の運転手(被告人) |
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ナレーター |
暴走した男の車は、道路左側に設置された信号柱に、後部荷台をブツけてしまいました。 その衝撃を受けた結果、助手席の同乗者1名は負傷しました。 しかし、後部荷台に乗り込んでいた同乗者2名は、後部荷台から転落して、死亡してしまったのでした。 |
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もうダメぽぉ。 もうダメです! |
後部荷台の同乗者の2人 |
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なんで私の知らない間に、車の荷台に、人が乗っているのよ!? え? 業務上過失致死? 私は、後部荷台に人がいることさえ知らなかったのよ? それなのに、人の死亡という結果についての予見可能性なんてあるわけないでしょ!? 予見可能性がないのなら、過失責任を問うなんて、おかしいわよ! |
車の運転手(被告人) |
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せっかく来てくれているんだから、メインの役をお願いしちゃった。 ゴメンね、つかさちゃん。 |
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役とは言え、被告人役というのは、あまりいい気持ちじゃないですね。 | ||||
車の荷台なんて本来乗っちゃいけない場所でしょ? しかも、無断で乗ったわけでしょ? それなら悪いのは、乗った方で、運転手に、その罪を問うってのは、どうなの? |
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でも、運転手の人だって、制限速度を超過しているです! それも、35qも超えているです! コレは、過失を基礎づける不適切な行為と言えるです! |
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あ、それ言うなら、予見可能性・・・だっけ? 予見可能性の認定が苦しくないかなぁ。 同乗者の存在さえ知らなかったら、その死亡という結果に対しては知り得るわけもないんだしさぁ。 |
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なかなか、よく考えていてくれるみたいで何よりだわ。 本件の争点は、まさにソコなのよね。 つまり、過失を基礎づける予見可能性の対象は、どこまで具体的なものでなければならないのか、という点なの。 |
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それじゃ、判決見ることにしますか? | ||||
そうね。 本決定は、 『被告人において、右のような無謀ともいうべき自動車運転をすれば人の死傷を伴ういかなる事故を惹起するかもしれないことは、当然認識しえたものというべきであるから、たとえ被告人が自車の後部荷台に前記両名が乗車している事実を認識していなかったとしても、右両名に関する業務上過失致死罪の成立を妨げないと解すべきであり、これと同旨の原判断は正当である。』 として、被告人の過失を認定しているのよね。 |
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んみゅ? コレって、さっき見た判例の危機感説を取り入れたもんなんじゃね? たしか、危機感説ってのは、予見すべき危険の程度は、結果発生の具体的な危険でなくても、無視できない程の不安感があれば、結果回避義務が生じるって考え方だったよね? 後部荷台の人の存在を知らなくっても、速度超過の運転してたら事故っちゃうかも・・・ってなくらいの不安感はあったわけだし、実際、助手席には人がおったわけなんだから、それなら、そうならないように努めるべきだったんじゃね? って話になるよね、コレ、危機感説の判例なんじゃね? |
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そういう見方ができなくはないですよね。 ただ、判例実務の主流は、危機感説の考え方をとっていないんですよね。 判例・多数説は、予見可能性とは、具体的予見可能性説に依拠しているとされるんです。つまり、具体的な結果と因果関係の基本部分の予見可能性が必要であるとされるんです。 |
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具体的な結果・・・って、ソレは無理じゃない? だって、後部荷台の人の存在を知らなかったのに、後部荷台の人を予見可能性の対象に含んじゃうってのは無理があるでしょ。 |
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真面目に検討しているみたいだから、ヒントあげよっか。 故意の錯誤の論点で学んだ法定的符合説って覚えてる? 例えば、サルが、私を殺そうとして、誤って関係のないナカちゃんを殺してしまった・・・といった場合、故意は否定された? |
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されないです! 客体の錯誤は、故意を阻却しないです! 人を殺そうと思って、人を殺したのですから、その人が自分の意図せぬ人だったからと言って、故意が否定されるわけではないです! コレが、法定的符合説からの結論です! もぉっ! ちょっと、気を抜くと、すぐに藤先輩は、私を殺してしまうです! |
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あたし、なんにもしてないのに、なんで責められてるの?! ところでナニ? 光ちゃんのヒントは、錯誤の法定的符合説の考え方が、ここでも転用できるってことなの? ・・・どういうこと? |
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もう、藤さんったら答えワカッテみえるのに、振りが上手いんですよね! 分かりました。 私が、藤さんに代わって、竹中さんに説明させて頂きますね。 本件では、助手席に人が乗っていたわけです。 速度超過の運転をしていれば、ちょっとしたハンドルの切り損ないが大きな事故に繋がる危険性については運転手の方も、認識していたはずです。 そして、運転手の方には、助手席の人に対しては、その事故と、事故が起きた場合の、その助手席の人の死についての予見可能性はあったと言えますよね。 具体的予見可能性説では、具体的な結果と因果関係の基本部分の予見可能性が必要であるとされるんですが、コレを本件に、あてはめてみると、運転手の方は、速度超過の事故による同乗者の死亡という具体的な結果についての予見可能性はあったこととなります。 そうであれば、その結果が、助手席の同乗者ではなく、運転手が知らない後部荷台の同乗者に生じたとしても、錯誤の法定的符合説とパラレルに捉えて、同一の構成要件の範囲内で、対象の抽象化を認めてもいいと考えることができるのではないでしょうか。 |
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じゃあ、じゃあさぁ。 助手席に人が乗っていなかったらどうかな? 予見可能性がないってことで、運転手の人は過失が認定されないことになって、無罪になるのかな? |
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う・・・そ、そ、それは。 | ||||
面白い質問ね。 本件において最高裁は、その点については言及していないから、判例の射程がどこまで及ぶのか・・・という疑問はあるところだけど、私は、助手席に人が乗っていなかったとしても尚、過失は認定されると思うわね。 理由としては、本件事案のように、ちょっとしたハンドルミスで暴走するような超過速度での運転では、公道を走っている以上、助手席の人ではなくっても、人に対する危険の認識はあったと言えるからと私は考えるわ。 仮に飛び出しがあったとしても、そんな速度で走っていては急停車も間に合わないだろうし、 制御不能になった車が、本件では信号機にぶつかっているけれど、ソレが人である可能性だってあったわけだし・・・。 そう考えれば、速度超過による対人事故の予見可能性はあって然るべきだと思うわ。 その人、というのが、後部荷台の人ではなかったとしても、車による対人事故の予見可能性があったのであれば、錯誤における法定的符合説を転用して、想定していた人とは異なる別の人に、その結果が生じたとしても、過失は認めていいと思うわね。 |
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想定していた人・・・って、車で走っている通行途上の全ての人を対象にしているの? 広すぎない? なんかもう、ソレって危機感説にも聞こえてきてまうんだけど・・・ |
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うーん、判例があるわけじゃないから、最早、評価や考え方の違いになっちゃうからねぇ。 サルが、予見可能性なしと評価して過失を認定しない、というのも私はありだと思うわよ? |
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難しいです・・・。 | ||||
でも、よく判例を検討していたわよね! コレなら喜んで、カタラーナをご馳走しちゃうわ! 判例は、一度読んで理解できるなら苦労しないから。 何度も読み返しているうちに、判例の判断枠組みが理解できるようになると思うから、難しくっていいのよ。 |
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え? カタラーナのゴチ決定? マヂ? わーい、わーい! |
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みんなで喫茶店でケーキ! う。 う。 嬉しいっ!! |
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私も、みんなで食べに行けるのは嬉しいわ。 | ||||
それじゃ、早くお店に移動して、勉強の続きをするです! | ||||
そうね。 そうしましょ。 |
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ウフフフフ。 最近、光ちゃんのゴチ少なかったからなぁ。 今日は、思う存分食べてやるんだぁ。 |
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ナニが「『今日は』思う存分」よ! いつも、食べれるだけ食べてる癖してっ! |