(法科大学院に入学して2週間が経つっていうのに、友達できないなぁ・・・ 私、大学時代も友達いなかったし、人付き合い苦手だからなぁ・・・話しかけないといけないんだろうけど、私にはハードル高いのよね・・・はぁ。) |
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あ、黒田 つかさ(クロダ ツカサ)さんだよね? ちょっと今から学食で、みんなでご飯食べるんだけど、よかったら一緒にどう? |
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・・・えっ!? わ、わ、私ですか? (わわわ! この人、たしか同じローの木下さん・・・だったかしら?) |
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うんうん。 あ、時間ないなら別に断ってくれていいよ。 で、どう? 一緒にご飯行かない? あ、ひょっとしてもう今日食べちゃってた? |
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いえ、まだです・・・ でも、私なんかいいんですか? (あ・・・せっかく誘ってくれたのに、なんか後ろ向きなこと言っちゃった!) |
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ご飯一緒するのに、いいも悪いもないじゃない! じゃあ、行こ、行こっ! あ、学食初めてだったりする? 先にトレイだけ持って並んでね! |
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あ〜。光ちゃん、お待たせ、お待たせぇ。 | ||
サル、遅いぃー。 私、お蕎麦頼んだのにノビちゃうじゃない! |
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あ、どうも。 | ||
・・・・・。 | ||
あら? サルの隣の方はどなた? |
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今年同じローの1回の同級生だよ。 クラスメイトの顔ぐらい覚えなよぉ。 |
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はじめまして。 黒田 つかさ です。 |
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はじめまして。黒田さん。 私、明智 光(アケチ ヒカル)です。 恥ずかしいんですけど、私、人の顔や名前を覚えるのが、どうも苦手で・・・。 気分悪くされたら、謝りますので、ヨロシクお願いしますね。 |
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いえ、私こそ、宜しくお願い致します。 (この人が、今年の1回生の学費全額免除優待生の明智 光・・・ 思っていたより物腰柔らかい人だわ・・・)。 |
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・・・・。 | ||
それで、こちらの方はどなたなんでしょうか? | ||
あぁ。 その子は、クラスメイトじゃないから、知らなくても無理ないお。 この大学の学部の子で、法学部の竹中 半(タケナカ ナカ)たんだお。 私たちの友達なんだお。 |
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どうも・・・。 | ||
どうも・・・。 (この子、私と似た匂いがする・・・ あんまり人付き合い得意じゃなさそうだわ。) |
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それより、とりあえず食べていいかな? 私の、お蕎麦がノビノビになっちゃいそうなんだけど・・・ |
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相変わらず食い意地はってんのな! 世の中で、一番大事なのは挨拶だろがっ!常考っ! ノビた蕎麦が食いたくねぇーなら、それはあたしが貰ってやっから、新しい蕎麦でも頼んで来いやぁっ! ・・・なんてね、なんてね! |
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サルっ!! あんた、そこまで言っといて。 最後に「なんてね」をつければ、全部済むと思わないでよねっ! |
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さ? サル? それ、木下さんに対して言ってるんですか? |
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あ、黒田さん初対面だから驚かれるわよね。 私、木下さんとは幼稚園時代からの幼馴染だから、つい、子供の頃のアダ名で呼んじゃうのよね・・・ |
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ワカル、ワカルよ。 クロちゃん・・・。 人格疑いたくなるようなドキュンあだ名を連呼する・・・光ちゃんっていうのは、残念ながらこーいう人なんだおね・・・ |
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木下さんは、それで構わないって言うんですか? | ||
光ちゃんが、こーいう人だっていうのは長い付き合いで、あたしワカッテるから気にしてないお。 あ、それより今、あたし黒田さんのことクロちゃんって呼んじゃったけど、ソッチこそ大丈夫? |
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あ・・・はい・・・ クロちゃん? ・・・あれ・・・なんか嬉しい・・・ 木下さんっていい人なんですね。 |
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もぐもぐ・・・。 | ||
まぁまぁ。 とりあえず食べちゃわない? 話すのは、腹ごしらえしてからでもいいっしょ? |
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なんか、今ソッチで私の悪口言ってなかった? | ||
言ってない、言ってない。 あたしが、光ちゃんのこと悪く言うなんて有り得ないお。 |
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・・・。 (明智さん、木下さんのことをサル呼ばわりする上に、木下さんの言動にまで威圧的な態度とるんだ・・・私への柔和な態度を考えると二面性のある人なんだわ、きっと。) |
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実は今日は、行政法の勉強について、勉強始めるにあたって、どんな教科書がいいか、とかを購買部行く前に教えてもらおうって話だったんだよね。 クロちゃんも、よかったら一緒に聞いていったら? |
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え? あ、ハイっ! (木下さん、私に色々声かけてくれてる・・・ やっぱり、この人優しいっ!) |
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サルぅー。 あんた黒田さんの迷惑も考えないとダメよ? いきなりご飯誘った上に、その後も引きとめるなんて、黒田さんには黒田さんの予定があるんだから。 黒田さんも御都合あるなら、断ってくれていいんですよ。 |
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あ、いえ大丈夫なので、よろしければ是非。 (この人、私を排除しようとしてる? 木下さんが私と仲良くするのがイヤなのかしら? 単に、自分の勉強法を他人には話したくないだけなのかしら?) |
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あ、それなら御一緒できますね。 よかった。 私も同級生の方と話せるのは嬉しいわ。 |
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私もです。 (打って変わった笑顔・・・ 取り繕う様が、ますます怪しい・・・) |
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えーっと。 それじゃ、そろそろ行政法の勉強をするのに必要な教科書選びについて話を始めましょうか。 ナカちゃんが、もう食事終えて待ってるみたいだしね。 |
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こくこく(相槌) | ||
個人的には、定番本としてお薦めなのが、コレかな。 『行政法 第4版』櫻井敬子 橋本博之 弘文堂 内容的にもオーソドックスで、使っている人も多い一冊だと思うわ。少し判例の引用が少ないって気はしなくもないところだけど、それは判例百選や、他の教科書を使えばいいってことで。 |
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最近だと、コッチもお薦めよ。 『行政法』宇賀克也 有斐閣 元々、宇賀先生が出してみえた『行政法概説T〜V』の内容を1冊にコンパクトにまとめたものなの。 行政法概説は、3冊というボリュームがあるだけあって、判例についても相当詳細な解説があって、ありがたいんだけど、初学者には難しいかなぁ、って思うから、そういう意味でもコッチがいいわね。 |
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最後はコレかな。 「芝池読本」って通称で親しまれている教科書よ。 『行政法読本 第3版』芝池義一 有斐閣 情報量は、上の2冊と比較すると少ないんだけど、それは分かりやすさに重点を置いているせいなの。 独自の短い設例も参考になると思うし、行政法という分野を理解するにはいいと思うわよ。 |
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明智さん! 『行政法T 行政法総論 第5版補訂版』塩野宏 有斐閣 を伝え忘れていますわ。 塩野先生は、行政法においては通説的立場の方ですし、この本は理論的な整理もなされていて、行政法の勉強には欠かせない一冊だと思いますけど? |
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ええ、たしかに黒田さんの言うとおりよね。 ただ、塩野先生のその本は、3巻本の1冊だし、初学者のサルや、半ちゃんには、少し難しいかなぁ、って思って・・・。 |
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木下さんも、私たちと同じロースクールの学生なんですよ! そんな言い方は、木下さんに失礼だと思いますけど? |
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いやいやいやいやいや、クロちゃん。 あたし、行政法なんて今いちどころか、今さんぐらいワカラナイから、教科書は読みやすいに越したことないお。 |
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木下さん・・・そんなに自分を卑下されなくても。 (明智さんが、いつも木下さんを出来ない、出来ないって言うから木下さんは自信をなくしちゃってるんだ・・・) |
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まま、教科書については自分に合った一冊を選ぶってことで、欠かせないのは、定番恒例の百選よね。 コッチは、行政法は、TとUの2冊だから、忘れずに買っておいてね。 |
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私としては 『ケースブック行政法 弘文堂ケースブックシリーズ 第5版』 弘文堂 もお薦めしたいですね。 判例百選と比べても、判例の引用部分が多いのは魅力的ですし、なにより、主要な個別法についても網羅している点が、行政法の勉強をする上で助かりますしね。 |
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クロちゃん、すっごい! 光ちゃんと同じくらい詳しいお! これからも一緒にクロちゃんと勉強できたら、すっごい頼もしいお。 ね、ね、よかったら一緒に勉強しない? |
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え? え? え? 私も一緒に勉強!? |
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あ、それ私も嬉しいです。 正直、サルと一緒だと、私がサルに教えてばかりの一方通行で物足りない思いしていたので。 私からも一緒に勉強するならお願いできませんか? |
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あ・・・私でよろしければ。 こちらこそ、宜しくお願い致します。 |
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私も、いていいですか? | ||
ナカたんは私の友達なのに、そんな寂しい聞き方しないでよぉ。 いつでも顔出しに来てよね! それじゃ、買う本もワカッタことだし、購買部行くかなぁ。あ、クロちゃんも行く? |
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ちょっと、黒田さんは、もう教科書持っているんだから、購買にはあんた1人で行けばいいでしょ? ナニ、人巻き込もうとしてんのよ! |
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いえ、木下さんともう少しお話したいので、是非ご一緒させて下さい。 (やっぱり、この人、私と木下さんが仲よくなるのイヤなんだ・・・) |
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マヂ? いいの? ウキっ、助かるよぉ。購買で迷ったら、アドバイスよろしくね! いやぁ、フッてみるもんだよねー。 |
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それじゃ、ナカちゃんは私と一緒に食後のコーヒーでも飲もうか? | ||
あ、私、コーヒーは夜寝られなくなっちゃうので紅茶がいいです。 | ||
じゃあ、また明日ぁ。 光ちゃん、ナカたん、またねぇ。 (スタスタっ・・・) |
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(トコトコっ・・・) あ、木下さん・・・ 今日は声かけて頂いて、ありがとうございました。 私、法科に入って、友達いなかったので、正直すごく嬉しかったです。 |
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別に改まって言わないでいいよぉ。 クロちゃんも私のこと藤(フジ)って呼んでくれていいよ? なんか木下さんって言われると、え? あたし? って感じしちゃうし。 |
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あ・・・呼べるかな? ・・・じゃあ、頑張って言えるようにしますね。 |
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ガンバることでもない気はするけど・・・ まぁ、いっか。 |
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ナカちゃん・・・ ところで話変わるけど、なんで今日は珍しくお金のないサルが、学食行こうって誘ってきたのかなぁ? |
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今日は学食が4人テーブルご利用祭りやってて・・・。 4人でテーブル利用のお客さんには、食券500円分が1人だけ貰えるんです。 |
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・・・聞いてないわね・・・。 | ||
あ、藤先輩的には言わないほうが良かったのかな? | ||
私や、知っていたナカちゃんはいいとして、関係ない黒田さんまで巻き込んで、その食券着服っていうのは、よくないんじゃないのかしら? | ||
あれ? どっかで私の噂してんのかな? なんか鼻ムズムズするけど・・・あ、花粉の季節だからだな。 別にあたし花粉症じゃないけど。 |
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あ、藤さん、購買着きましたよ。 キャッ! 藤さんって呼んじゃった。 |
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ウキキキっ! (このメガネなんかおもしれっ!) |