最判平成4年10月29日 〜伊方原発設置許可事件〜 |
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配役から言うわね。 それじゃ、愛媛県伊方町に建設される原子力発電所(いわゆる原発)をめぐって・・・。 原子炉設置の許可を申請した四国電力を、サル。 原子炉設置に反対の住民を、チイちゃん。 同じく反対する住民を、ナカちゃん。 原子炉設置の許可をした国(内閣総理大臣)を、つかさちゃん。 ナレーターを私が務めるわね。 |
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ナレーター |
昭和47年。 愛媛県伊方町において、原子力発電所の建設を計画した四国電力は、原子炉等規正法23条に基づいて、内閣総理大臣に、原子炉設置の許可申請を求めました。 |
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ますます深刻化するエネルギー問題に対応するためにも、原子力発電所が必要だね。 我が国の今後の発展を支えるには、安定した電力供給は不可欠だかんね! よし、内閣総理大臣さん! 原子炉設置したいから、その設置許可をしてもらいたいお! (昭和47年5月) |
四国電力 |
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国(内閣総理大臣) |
許可します。 (昭和47年11月) |
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待って、待って、待ってぇ!! チイは、この伊方町に住んでいる住民だけど、そんな許可処分は認められないよぉ! 行政不服審査法に基づいて、異議申立てをするよぉ。 原発なんて危ないものを、なんで、そんな簡単に認めちゃうの!? |
反対住民 |
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ナレーター |
しかし、住民のチイちゃんの異議申立ては棄却されます。 | |
ナカちゃん、どう思う? 絶対、ダメだよね? |
反対住民 |
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私も原発には反対です! 一緒に、原発設置に反対するです! |
反対住民 |
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聞いて、聞いてよぉ。 原子炉設置の許可には、その安全審査の実体および手続きにおいて、違法な点があったと思うんだよぉ。 そんな違法を放置したまま原子炉設置を許可しちゃったら、きっとチイ達の生命、身体等が侵害される危険が生じるはずだよ! だから、チイ達は、原子炉設置許可処分の取消を求めるよ! |
反対住民 |
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はい、そこまでね。 | ||
ほうほう。 原発ですか。 なかなかホットな話題だね、これ。 |
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今は、違う意味でホットなんでしょ? この事件は、昭和後期だから、別に今の事件ってわけじゃないわよ? この事件で見て欲しいのは、さっきも話したように行政処分に裁量があることを前提として、その処分の基準を行政機関が定めている場合において、その基準を特別な理由なく違反することは、裁量濫用になるのではないのか? という視点ね。 この判決文では、この問題に対する判断枠組みが述べられているわ。 ソコを見てもらいたいと思っているのね。 |
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ふむふむ。 まぁ、現実問題として伊方原発は既に存在するんだから、オチとしてはわかっているわけだしね。 真面目に判決文を見ることにするよ。 |
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あんた、ホント事件のオチばっかり気にしてんのね。もう! それじゃ、判決文を見ていくわね。 『原子炉を設置しようとする者は、内閣総理大臣の許可を受けなければならないものとされており(規制法23条1項)、内閣総理大臣は、原子炉設置の許可申請が、同法24条1項各号に適合していると認めるときでなければ許可してはならず(同条1項)、右許可をする場合においては、右各号に規定する基準の適用については、あらかじめ核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること等を所掌事務とする原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないものとされており(同条2項。なお、昭和五三年法律第八六号による改正により、実用発電用原子炉の設置の許可は被上告人の権限とされ、同法附則3条により、右改正前の規制法の規定に基づき内閣総理大臣がした右原子炉の設置の許可は、被上告人がしたものとみなされることとなった。)、原子力委員会には、学識経験者及び関係行政機関の職員で組織される原子炉安全専門審査会が置かれ、原子炉の安全性に関する事項の調査審議に当たるものとされている(原子力委員会設置法(昭和五三年法律第八六号による改正前のもの)14条の2、3)。』 とあるわ。 |
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コクコク(相づち)。 | ||
この許可の根拠条文となる法令資料としては、原子炉等規制法(改正後のもの)を見ておくべきね。 『(設置の許可) 第23条 原子炉を設置しようとする者は、次の各号に掲げる原子炉の区分に応じ、政令で定めるところにより、当該各号に定める大臣の許可を受けなければならない。 1項 発電の用に供する原子炉(次号から第四号までのいずれかに該当するものを除く。以下「実用発電用原子炉」という。) 経済産業大臣 2項 船舶に設置する原子炉(第四号又は第五号のいずれかに該当するものを除く。以下「実用舶用原子炉」という。) 国土交通大臣 3項 試験研究の用に供する原子炉(前号、次号又は第五号のいずれかに該当するものを除く。) 文部科学大臣 4項 発電の用に供する原子炉であつて研究開発段階にあるものとして政令で定める原子炉 経済産業大臣 5項 発電の用に供する原子炉以外の原子炉であつて研究開発段階にあるものとして政令で定める原子炉 文部科学大臣』 『(許可の基準) 第24条 1項 主務大臣は、第二十三条第一項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。 1号 原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと。 2号 その許可をすることによつて原子力の開発及び利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。 3号 その者(原子炉を船舶に設置する場合にあつては、その船舶を建造する造船事業者を含む。)に原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があり、かつ、原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること。 4号 原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質(使用済燃料を含む。以下同じ。)、核燃料物質によつて汚染された物(原子核分裂生成物を含む。以下同じ。)又は原子炉による災害の防止上支障がないものであること。 2項 主務大臣は、第二十三条第一項の許可をする場合においては、あらかじめ、前項第一号、第二号及び第三号(経理的基礎に係る部分に限る。)に規定する基準の適用については原子力委員会、同項第三号(技術的能力に係る部分に限る。)及び第四号に規定する基準の適用については原子力安全委員会の意見を聴かなければならない。』 |
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うわぁ。 まぁた行政法お得意の関連法令資料かぁ。 |
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どんな文句よ、ソレは。 判決文は、次に続くわ。 『また、規制法24条1項3号は、原子炉を設置しようとする者が原子炉を設置するために必要な技術的能力及びその運転を適確に遂行するに足りる技術的能力を有するか否かにつき、同項4号は、当該申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質(使用済燃料を含む。)、核燃料物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含む。)又は原子炉による災害の防止上支障がないものであるか否かにつき、審査を行うべきものと定めている。 原子炉設置許可の基準として、右のように定められた趣旨は、原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料として使用する装置であり、その稼働により、内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって、原子炉を設置しようとする者が原子炉の設置、運転につき所定の技術的能力を欠くとき、又は原子炉施設の安全性が確保されないときは、当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ、右災害が万が一にも起こらないようにするため、原子炉設置許可の段階で、原子炉を設置しようとする者の右技術的能力並びに申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備の安全性につき、科学的、専門技術的見地から、十分な審査を行わせることにあるものと解される。 右の技術的能力を含めた原子炉施設の安全性に関する審査は、当該原子炉施設そのものの工学的安全性、平常運転時における従業員、周辺住民及び周辺環境への放射線の影響、事故時における周辺地域への影響等を、原子炉設置予定地の地形、地質、気象等の自然的条件、人口分布等の社会的条件及び当該原子炉設置者の右技術的能力との関連において、多角的、総合的見地から検討するものであり、しかも、右審査の対象には、将来の予測に係る事項も含まれているのであって、右審査においては、原子力工学はもとより、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものであることが明らかである。 そして、規制法24条2項が、内閣総理大臣は、原子炉設置の許可をする場合においては、同条1項3号(技術的能力に係る部分に限る。)及び4号所定の基準の適用について、あらかじめ原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めているのは、右のような原子炉施設の安全性に関する審査の特質を考慮し、右各号所定の基準の適合性については、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。』 として、縷々根拠条文を指摘しているわね。 |
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なんか、やたらと小難しいこと言っているね。 まぁ、つまり、原子炉なんて専門性の高いモンについては、専門家の判断を大事にしろってことだよね。 |
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相変わらず乱暴な理解ね、サルは。 判決文は、上記の見解から、次のような規範を立てているわ。 『以上の点を考慮すると、右の原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。』 とね。 この判決文では、裁量基準が合理性をもつか否かの審査においての基準が示されているわ。 俗に、二段階審査と呼ばれる審査基準ね。 1段階目では、第三者機関の設置した基準に不合理な点があるか否か、を審査。 2段階目では、不合理ではないとして、その判断の過程に誤りはなかったのか否か、を審査。 という審査方法ね。 もっとも、本件では、第三者機関が介在しているという特殊な事情があるため、3段階の審査になっているわけなんだけれど、基本は2段階審査という判断枠組みってことで抑えておいてくれればいいわ。 |
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成程、成程。 基準が正しいからといって、個別具体的な事案においては、また別途考慮しなければならない事情もあるだろうし、そうであれば、そのような事情についても斟酌した個別的審査が必要ってことね。 |
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まぁ、そうね。 基準が合理性を有するものであっても(1段階目の審査)、その基準を本件に適用することの判断の合理性(2段階目の審査)を審査する、という判断枠組みだからね。 この判決において、抑えるべき規範については、次回の判例検討後に、また別途まとめることにするわ。 |
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なんで今日やっちゃわないの? | ||
行政法の勉強会も久し振りだし、いきなり飛ばすと、息切れしちゃいそうだからね。 | ||
・・・あぁ、はいはい。 ソレって、要するに、あたし達が・・・じゃなくって、アホの管理人が・・・って話だよね? |
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メ、メタは駄目ですぅっ!! |