最判昭和43年12月24日 〜墓地埋葬法通達変更事件〜 |
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それじゃ配役からね。 私は、ナレーターで。 墓地を経営する真言宗のお寺の方をサル。 サルのお寺に、埋葬を依頼した異宗徒の方を、ナカちゃん。 厚生省を、黒田さんって配役でお願いします。 |
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ナレーター |
「墓地、埋葬等に関する法律」は、その13条で、墓地等の管理者は、埋葬等の求めを受けた場合には、正当の理由がなければ、これを拒んではならないとしていました。 そして、この13条違反の者に対しては、同法の21条で罰則を設けていました。 そして、この13条の「正当の理由」の解釈については、厚生省環境衛生課長は、「従来から異教徒の埋、収蔵を取扱っていない場合で、その仏教宗派の宗教的感情を、著しく害うおそれ」のある場合には、「正当の理由」があるとして拒んでも差し支えないとする通達を発していました。 |
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わしの寺の墓地には、真言宗の宗派の考えにそぐわない者は埋葬させないんじゃ。 | 墓地を経営する真言宗のお寺の方 |
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異宗徒の方 |
私は、異宗徒の者ですが、おたくのお寺に、埋葬をお願いしたいです。 | |
いやぁ、それは出来ない相談ですなぁ。 私は寺を有する者として、我が宗派の考えとは違う方の埋葬は遠慮してもらっているんでのぉ。 |
墓地を経営する真言宗のお寺の方 |
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異宗徒の方 |
そんな理由では納得できないです。 異宗派であるからと言って、埋葬を断るなんて、そんなことが通ると思っているんですか? |
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「墓地、埋葬等に関する法律」では、仏教宗派の宗教的感情を害うおそれのある場合には、異教徒の方の埋葬を断わることは正当な理由となっているんでな。 分かったら帰って、つかぁさい。 |
墓地を経営する真言宗のお寺の方 |
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厚生省 |
どうも、あの通達を出してからというもの、通達の「正当な理由」を盾に、異教徒の方の埋葬を拒否する事件が、各地で起きているようですね。 しかし、「墓地、埋葬等に関する法律」の13条の立法趣旨に鑑みるに、このような解釈は、到底認められないものと考えるべきでしょうね。 第三者機関からの諮問回答もあることですし、ここは新たな通達を出して、この問題の解決を図ることとしましょう。 |
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ナレーター |
といった経緯から、昭和35年3月8日。 厚生省公衆衛生局環境衛生部長は、各都道府県指定都市衛生主管部局長に対して、「依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由として埋葬等の求めを拒むことは『正当の理由』によるものとは到底認められない」とする解釈運用をする旨を、通達として発しました。 |
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なんや、その通達は。 そんな通達出されたら、わしの寺に、異宗徒の者の埋葬を認める羽目になるでないか。 しかも、21条に罰則がある以上、「正当な理由」なく拒めば、コッチが刑罰を受けることになるわけやろ? なんで、寺の所有者のわしが、我が宗派の考えにそぐわない者の埋葬を我慢せんとならんのや! そんなことおかしいやろ? こんな通達取り消さんかい! |
墓地を経営する真言宗のお寺の方 |
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はい。お疲れ様ぁ。 事案の概要は掴めた? |
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うーん、コレは、通達を取り消してあげることを認めてあげないといけないって思ったかなぁ。 | ||
最高裁は、そうは言っていないんですけどね。 | ||
ん? もしかして、その言い方だと、認めてもらえないってオチなの? |
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え? 藤さん、まさか、この有名判例をご存じないのですか? |
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んみゅ? ・・・い、いやいや。 も、も、勿論知っとるお。 ただ、判例の考えが必ずしも正しいのか、っていう疑問からの問題提起を先にしたまでだお。 うんうん、そうそう。 |
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ですよね! 流石、藤さんです。 でも、竹中さんもみえるので、やっぱり判例の立場を踏まえてから議論すべきですよね? |
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そ、そ、そうだよね。 それじゃ、あたしとクロちゃんは知っとるけど、一応、最高裁の判断を見ようか。 まぁ、あくまでも確認の意味でね。 |
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(サルっ! あんた、どんだけ知ったかを、続けるつもりなのよ!) それじゃ、事案のポイントをまとめるわね。 本件では、通達は取消訴訟の対象になるのか? というのが一番の争点になるわね。 そして、もし、国民が通達の取消しを求める訴えが認められないとするのであれば、その理由について理解して欲しいわね。 というわけで、まず判旨を見ることにするね。 |
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まぁ、今更感は拭えないけど見ておきますか。 (・・・なんで認めてもらえないんだろ。それ、おかしくね?) |
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・・・・。 (藤先輩から、私と同じワカラナイオーラが漂っているような気がするです。) |
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最高裁の判断は、次のものよ。 『元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあっても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なるところはない。 このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。 また、裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろんで、裁判所は法令の解釈適用にあたっては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは毒にその違法を判定することもできる筋合である。』 として、本件通達の取消を求めて出訴した寺院の方の被った損害や、不利益は、直接本件通達によって被ったものとは言えないという判断を示し、本件通達の処分性を否定した上で、本件通達の取消を求める訴えを却下したのよね。 行政行為の処分性については、また、改めて、しっかり時間をとって勉強して、そこで学ぶことにするから、今は置いておいてくれていいからね。 |
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本判決では、通達は、あくまでも行政内部のものであることを強調しているんですよね。 つまり、通達は、行政組織内部での規範たる性質をもつに過ぎないものである以上、行政主体と国民との間の権利義務について規律する法規ではないから、取消訴訟の対象にはならないってことになるんですよね。 |
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でも、実際には、この通達によって、お寺の方には、自分のお寺に本来断りたい異宗徒の方の埋葬を我慢するという不利益が起きているんだよね。 だったら、もう、そんな通達は行政内部のものだなんてのは通らないと思うんだけどなぁ。 |
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そういう考え方もあり得ると私は思うわよ。 本件通達に処分性を肯定して、取消訴訟で争わせることを認めるという救済ルートはあってもいいと思うわ。 この考え方については、この判例検討から戻って話すことにするわね。 議論が発展しちゃう前に、念押しておくと、本判決から学んで欲しいのは、あくまでも事案の争点となったところね。 つまり、原則として通達は取消訴訟の対象とはならない、という原則論。 その理由は、今、つかさちゃんが言ってくれたことが挙げられるわね。 重複しちゃうから、私の口からはもう言わなくっていいわよね。 |
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かきかき (メモ中) |
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・・・。 (藤さんの検討は、おそらく義務不存在の訴えや、公法上の当事者訴訟の検討にまで伸びてみえるんだろうなぁ。 ただ、その検討をするには、竹中さんがまだ勉強してないから口にするのを遠慮してみえるんだろうなぁ。 優しいなぁ、藤さん。) |
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・・・難しい。 | ||
・・・。 (どこまで検討されてみえるんだろ。 私に振らないのは、きっと、私じゃ藤さんの疑問に応える力がないと思われてみえるんだろうなぁ。 私も、もっと頑張らないと!) |