最判昭和57年4月23日判決 〜中野区マンション建設用特殊車両通行認定留保事件〜 |
||
全く関係ないけれど・・・ 4月23日って、サルの誕生日と一緒だね。 |
||
今の、あたしは痛みで、なんも聞こえないよ! でも、一応御礼は言っておくね。覚えててくれて、ありがとね! |
||
・・・。 (聞こえないと言いながら、しっかり対応した御礼が言えているとこ見ると、大丈夫みたいです。) |
||
藤さん・・・ こんなヒドい目に遭わされても、御礼を言われるなんて、なんて律儀なんだろう。 ホント、スゴいです。 |
||
それじゃ、配役を伝えるわね。 私は、いつものようにナレーター。 訴えた不動産会社の方を、ナカちゃん。 道路管理者である中野区を、黒田さんって配役でお願いします。 サルは、判例事案再現中に、濡れたハンカチで目を拭っておいてね。 |
||
我が社は、東京都中野区に、マンション建設計画を立てたです! 首都圏のマンション需要は高まる一方です! コレは儲けるチャンスです! |
不動産会社 |
|
ただ、建築資材を現場に運び込むには、区道を利用しないとならないです! 道路管理者である中野区に、車両制限令12条に基づいて、特殊車両認定の申請をするです! |
不動産会社 |
|
道路管理においては道路法、そして同法に基づく車両制限令の定めに従い、道路管理者である中野区は、認定申請を受け付けていました。 道路管理の認定を定める該当条文は、次のものでした。 道路法 『第47条 1項 道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(人が乗車し、又は貨物が積載されている場合にあつてはその状態におけるものをいい、他の車両を牽引している場合にあつては当該牽引されている車両を含む。以下本節及び第八章中同じ。)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める。 2項 車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度をこえるものは、道路を通行させてはならない。 3項 道路管理者は、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため必要があると認めるときは、トンネル、橋、高架の道路その他これらに類する構造の道路について、車両でその重量又は高さが構造計算その他の計算又は試験によつて安全であると認められる限度をこえるものの通行を禁止し、又は制限することができる。 4項 前三項に規定するもののほか、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両についての制限に関する基準は、政令で定める。』 車両制限令 『第5条 市街地を形成している区域(以下「市街地区域」という。)内の道路で、道路管理者が自動車の交通量がきわめて少ないと認めて指定したもの又は一方通行とされているものを通行する車両の幅は、当該道路の車道の幅員(歩道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない道路で、その路肩の幅員が明らかでないもの又はその路肩の幅員の合計が一メートル未満(トンネル、橋又は高架の道路にあつては、〇・五メートル未満)のものにあつては、当該道路の路面の幅員から一メートル(トンネル、橋又は高架の道路にあつては、〇・五メートル)を減じたものとする。以下同じ。)から〇・五メートルを減じたものをこえないものでなければならない。』 6条、7条省略 『(特殊な車両の特例) 第12条 幅、総重量、軸重又は輪荷重が第三条に規定する最高限度をこえず、かつ、第五条から第七条までに規定する基準に適合しない車両で、当該車両を通行させようとする者の申請により、道路管理者がその基準に適合しないことが車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと認定したものは、当該認定に係る事項については、第五条から第七条までに規定する基準に適合するものとみなす。ただし、道路管理者が運転経路又は運転時間の指定等道路の構造の保全又は交通の安全を図るため必要な条件を附したときは、当該条件に従つて通行する場合に限る。』 |
||
中野区へのマンション建設にあたって、建設用の特殊車両の道路使用の認定をして下さいです! | 不動産会社 |
|
道路管理者・中野区 |
特殊車両認定の申請ですか。 はぁ、預かっておきますね。 |
|
工期もあることですし、なるはやでお願いするです! | 不動産会社 |
|
道路管理者・中野区 |
困ったなぁ。 あの不動産業者の方のマンション建設には、地域周辺住民が反対しているんだよなぁ。 特殊車両認定申請を認定しちゃうと、工事に着工しちゃって、トラブルになるんじゃないのかなぁ。 |
|
申請認定に、どうしてこんなに時間がかかっているですか? 建築工事の工期があるって言ったはずです! 特殊車両の道路使用なくして工事はできないです! 早く認定するです! |
不動産会社 |
|
道路管理者・中野区 |
はぁ。 まぁ、手続きには色々時間がかかるものなので・・・。 |
|
5ヶ月経ったです! 幾らなんでもかかり過ぎです! どれだけ待たせれば気が済むです! この認定留保は違法です! お陰で、工期が大幅に遅れてしまったです! どうしてくれるです! 建築工事の遅延による損害賠償を求めて訴えるです! |
不動産会社 |
|
|
||
はい。お疲れでーす。 サルは、目ぇ痛いの治った? |
||
一応痛みはとれたかな・・・ (もっとも、おまいらへの恨みは残っているけどねっ!) |
||
あうあうあうあう。 藤先輩から、私に対する恐ろしい怨念めいた思いを感じるです! コレは最早呪怨と言えるレベルです! |
||
竹中さん。 藤さんは、そんな執念深い方じゃないですよ! もう御二方を許して下さってますから、安心してください。 |
||
ちょっと、つかさちゃん。 私が、サルにナニを許してもらうって言うのよ? 私は、何もしてないのに、いきなり頭突きされたんだからね! |
||
でも、噴霧器を直接眼球に噴射は、流石にやり過ぎだったと・・・。 藤さん、スゴイ悲鳴上げていましたし・・・。 |
||
噴出のより高い効果を狙うなら、直接噴射しかないからね! | ||
全く反省の色がねぇお。 (見てろぉ!? ぜってぇ、やり返しちゃるお!) |
||
じゃあ、そろそろ事案のポイントまとめるね。 この事案は、行政裁量の論点でも扱うことになる判例なんだけど、そこでは、行政行為を行う時期についての判断の余地をいう「時の裁量」の範囲と言えるか否か、ということが論点になっているのよね。 でも、その論点については行政裁量を勉強する際に、また、改めて検討することとして・・・。 今回の争点は、本件『認定』(車両制限令上の認定)が、講学上どのような性質のものと捉えられるか、というところね。 個別の法律を踏まえて、最後に聞くから考えておいてね。 それじゃ、事案についての最高裁の判断を知るために、判旨を見ることにするね。 |
||
あたし、事案の検討していないから、答えなくってもいいよね! | ||
都合のいい解釈だけは早いんだから。 まぁ、いっか。最高裁の判断は、次のものよ。 『道路法四七条四項の規定に基づく車両制限令一二条所定の道路管理者の認定は、同令五条から七条までに規定する車両についての制限に関する基準に適合しないことが、車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないものであるかどうかの認定にすぎず、車両の通行の禁止又は制限を解除する性格を有する許可(同法四七条一項から三項まで、四七条の二第一項)とは法的性格を異にし、基本的には裁量の余地のない確認的行為の性格を有するものであることは、右法条の改正の経緯、規定の体裁及び罰則の有無等に照らし明らかであるが、他方右認定については条件を附することができること(同令一二条但し書)、右認定の制度の具体的効用が許可の制度のそれと比較してほとんど変るところがないことなどを勘案すると、右認定に当たつて、具体的事案に応じ道路行政上比較衡量的判断を含む合理的な行政裁量を行使することが全く許容されないものと解するのは相当でない。 これを本件についてみるのに、原審の適法に確定したところによれば、被上告人の道路管理者としての権限を行う中野区長が本件認定申請に対して約五か月間認定を留保した理由は、右認定をすることによつて本件建物の建築に反対する附近住民と上告人側との間で実力による衝突が起こる危険を招来するとの判断のもとにこの危険を回避するためということであり、右留保期間は約五か月間に及んではいるが、結局、中野区長は当初予想された実力による衝突の危険は回避されたと判断して本件認定に及んだというのである。 右事実関係によれば、中野区長の本件認定留保は、その理由及び留保期間から見て前記行政裁量の行使として許容される範囲内にとどまるものというべく、国家賠償法一条一項の定める違法性はないものといわなければならない。』 としているの。 「時の裁量」という論点としては、行政庁の本件申請への認定留保は、適法な行政裁量の範囲内であるとして、5ヶ月にも及ぶ認定留保は適法であるという判断を下しているのよね。 ただ、現実問題として、業者側(不動産会社)からすれば、5ヶ月もの間、認定が遅れたら、不動産会社役のナカちゃんが言っていたように、工期は大幅に遅れるし、建築にあたって借入でもしてようものなら、その返済も遅れることになって利息もかさむことになるし・・・と、看過しがたい不利益を被ることになっちゃうわよね。 それじゃ、本件事案の今回の勉強会での争点を聞くわね。 本件『認定』は、講学上どのような性質を有するでしょう? |
||
行政側や、マンション建設に反対する住民側としては、『許可』であることが望ましいですよね。 他方、不動産会社側からすれば『確認』であることが望ましいですよね。 |
||
どうして、そのような考え方になるのですか? | ||
判例実務においては、許可と確認では裁量の有無が異なるのよ。 許可には、行政裁量(法律によって行政権に委ねられた判断の余地のこと)が認められるんです。 これに対して、確認は裁量のないものとされるのです。 確認であれば、不動産会社としては、認定の留保・・・それも5ヶ月もかけるなんて許されない、という主張も可能になると言えるからですね。 |
||
成程です。 えーっと。本判決では、『道路法四七条四項の規定に基づく車両制限令一二条所定の道路管理者の認定は〜中略〜車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないものであるかどうかの認定にすぎず〜中略〜基本的には裁量の余地のない確認的行為の性格を有するものである』 としていますから、本件認定は、講学上の『確認』であると言えます。 ただ、講学上の『確認』であるとしながらも、一定の範囲の裁量はあるとしているところがポイントになるのではないかと。 本判決ですと『右認定の制度の具体的効用が許可の制度のそれと比較してほとんど変るところがないことなどを勘案すると、右認定に当たつて、具体的事案に応じ道路行政上比較衡量的判断を含む合理的な行政裁量を行使することが全く許容されないものと解するのは相当でない。』とする部分です。 |
||
そうね。 本件認定は、講学上の『確認』であるとしているわね。 ただ、要件を満たしていても、一定の範囲の裁量はあるとしているのよね。 本判決でも『他方右認定については条件を附することができること(同令一二条但し書)』を法令からも読み取って、一定の裁量を認めているわけよね。 この裁量については「時の裁量」という論点があるところだから、行政裁量のところで勉強してから、改めて検討することにしましょ。 |
||
んみゅ? 終わった? |
||
ホント抜け目なく、サボる口実見つけることだけは得意だよね。 まぁ、目が痛かったというのは、今回は私たちも把握しているから、見逃してあげるけどね。 |
||
まったくもぉっ! 世の男共を魅了する、あたしのチャームアイが失われるようなことがあったら、世界的損失なんだかんね! そこんとこワカッテんの? |
||
藤さんには、彼氏なんか作らずに、ずっと私たちと一緒に居て欲しいです・・・ | ||
大丈夫よ、つかさちゃん。 こんな女子力低いサルに惚れる物好きなんて、そもそも存在しないんだから。 放っておいても、ずっと独り者よ。 |
||
え!? そうなんですか? 私にとっては、ソレは、とっても嬉しいんですけど! |
||
・・・。 (神様っ! この金満ブルジョワ女が、DV男と付き合ってブン殴られますようにっ! 滅茶苦茶浮気性な男と付き合って、2号さんどころか20号くらいの扱い受けますようにっ!) |